02話 ツナVS持田先輩


ツナがリボーン君によって撃たれた弾は死ぬ気弾。
そして、その弾で撃たれた者は、一度死んでから死ぬ気になって生き返る。
死ぬ気になる内容は死んだ時に後悔したこと。
そして、死ぬ気になったとき凄まじい力を発揮するのは、潜在能力だという。
だけどそんな話を信じる人は、まず、居ないとだろう。

「でも、実際見ちゃったしなぁ」

ツナが京子ちゃんに告白するところなんて見たくなくて帰ってきてしまったが、あれは絶対にいつものツナじゃなかった。

「それに…」

私は、リボーン君の言葉を思い出していた。

「ふぁみりぃー?」
「俺はボンゴレファミリー9世の依頼で、ツナをマフィアのボスに教育する為にやってきた」
「要するに私に、マフィアになれって言ってるのかな?」
「そうだぞ」
「一晩お持ち帰り…じゃあ、ダメ?」
「お前に拒否権なんてある訳ねぇだろ」
「ぇええ!」


これは、非常に困った話だ。
そりゃボスがツナだって言われたら、心配だから入らないわけにはいかないし、無視も出来ない。
結局、考える時間を貰っても、私は、“ふぁみりー”とやらに入る羽目になっただろう。
だけど、どうしてだろう?

「どんどんツナが離れていく気がする…」

私は、そんな不安を感じながらも、部屋のドアノブに手をかけた。


「グッドモーニング!ツナ!」

朝、学校に行く前にツナの部屋に寄って行くのは私の日課。
じゃないと、ツナはたまにサボっちゃう時があるからだ。

「また勝手に俺の部屋に入ってきて!せめてノックしろよ!」
「あれ?珍しい!早起きだね!ツナ」

普段いつも、なんだかんだで起こすのも私の役目だ。

「なんか、寝れなくてさ」

そう言うツナは、少し顔色が良くないように見えた。
なんとなくだけど、昨日の出来事を少しだけ見ていた私は、
もしかして、京子ちゃんの事かな。という予想はついていた。

「…折角早く起きたのに、いい加減着替えないと遅刻しちゃうよ!」
「じゃあ、出てけよ!」
「え。私は別に気にしないよ!むしろ、大歓迎だよ!」
「俺が気にするの!」

そう言ってツナは私を無理矢理、部屋から追い出す。
なにがあったのかは完璧に分からないけど…。

「これで、ちょっとは元気になってくれたら良いんだけど…」

私も、ちゃんといつも通りに振る舞えていたかな…?
小さく自分を嘲笑しながらも、奈々子さんに挨拶を交わして私は、ツナより一足先に玄関へと出た。

「はぁ~」
「…20回目」
「ご、ごめん、。でも、はぁ~…」
「もう!今ので21回目だよ!ツナ!」

ツナは玄関を出てから、ずっとこの調子だ。
それに、そんなに家から距離はないはずの学校につくまでのため息が21回。
学校に近づくたびにため息が多くなっていた。

「ツナ」
「なに?」
「私はツナが好きだよ」
「なっ!なんだよ急に改まって!」
「言いたくなっただけ!別に、いつもと変わらないでしょ」
「…あ、ありがとう。。」
「うん!」
「でも」
「でも?」

教室の前で一端ツナが立ち止まった。

「笹川京子と目が合ったらどーしよう」
「はい?」

そして、ツナがガラリと扉を開けた瞬間、盛大な笑い声が響き渡った。

ギャハハハハハ!

「な、なに?!」

クラスメイト達の大きな笑い声と一緒に聞こえてきたのは、

パンツ男のおでましだー!

電撃告白!

変態!

などという、ありとあらゆる罵声の言葉。
クラス中があまりにも盛り上がっているので私が呆然としていると、クラスメイトの男の子が突然、私に向かって大声で言った。

「おい、!聞いたか?!」
「え?」
「ツナの奴、裸で笹川に告白して、めいいっぱい拒絶されたんだと!」

…なるほど。ツナが朝から可笑しかったのはそういうことか。
私は昨日の出来事を思い出し、ツナの様子がおかしかった意味がすべて繋がった。

「でも、なんでこんなに皆知ってるの…」

例え噂にしても、いくらなんでもこの広がりようは異常だ。

「その場に居た持田先輩に聞いたんだよ!」
「…持田?」

だれだっけ、それ。
なんて思考を巡らせていたら、次は、教室からではなく廊下の方から声が聞こえてきて、後ろを振り返ると立っていたのは剣道着を着た男性たちだった。

「け、剣道部?」
「!?」
「道場で持田先輩がお待ちかねだ」
「ぇえ?」
「ちょっ!」
「ツ、ツナ?!」

私には、展開が速すぎてついていけず、気が付くとツナは剣道部の人達に連れて行かれてしまった。

「道場?…あ!そうだツナ!」

私は、急いでツナの後を追った。


しかし、私が着いた時にはすでに遅く、道場にはクラス中…いや、学校中の人が見に来ているのではないかというほど、人で溢れ返っていた。

「お前のようなこの世のクズは、神が見逃そうがこの持田が許さん!」
「なっ!なによ、あいつ!?」

ツナへの冒涜とも言える言葉が聞こえてきた。
そして、その持田先輩らしき人は、ツナに勝負を叩きつけてきた。
剣道初心者であるツナが、10分間で1本とって見せろとの勝負だ。
そして、私がまたしても聞き捨てならないのは、人の意思を無視した発言の数々だった。

「賞品はもちろん!笹川京子だ!!」

豪快に笑う持田先輩に対して、いつの間にかその場にツナが居なくなっていること気づくと、さらに笑い声を大きく上げた。

「これで不戦勝だ!京子は俺のもの!」

京子ちゃんも、困ったような表情を見せている。
居てもたっても居られなくなった私が、一歩出て踏み出そうとすると、クラスメイトの女の子が私を止めようと声をかける。

「や、やめときなよ、!危ないよ!」
「でも!」
は、沢田君と幼名馴染みだし、京子ちゃんとも仲が良いから気持ちはわかるけど、持田先輩に刃向ったらまで危ない目に合うかもしれないよ!」
「心配してくれてありがとう…。でも、大丈夫だから」
「え?」
「ツナは来るよ」
「え、!!」

私のことを心配するクラスメイトを余所に、私は持田先輩の前に出た。

「ちょっと、待ってください」
「なんだ、お前は?」
「2年A組のです!私、ツナの幼馴染なんですけど、最近、ツナが私の扱いひどくて…」
「誰がそんなこと聞いた!馬鹿か、お前は!何の用だ!勝負はもう、ついた!」
「ツナはトイレです。必ず戻ってきます」
「例えあのカスが戻って来たところでどうにもならんわ!」
「そんなのやってみなきゃ、分からないですよ!」
「いいや!わかる!勝つのは俺だ!」
「ツナが勝ちます!」
「俺だ!」
「ツナ!絶対にツナ!!」
「俺だ!俺だ!絶対に俺だー!」
「ツナです!ツナ!ツナ!ツナー!」

その言い合いは止まる様子が当たらなかった。
終わりが見えない言い争いに、周りの者がざわつき始める。

「おい、だれか止めろよ。」
「持田先輩、女の子相手にムキになっちゃってるよ」
「しかし、も趣味悪いよな。沢田なんてさ」
「幼馴染だから憐れんでるだけだろ」

周りから何を言われてもいい。
でも私は、ツナを信じてる。



また俺のダメ人生に新たな歴史が刻まれた。

「でもいーや、どうせ勝てねーもん」

ツナが今起こってる出来事など知るはずもなく、逃げ帰ろうと足を進めた途端、なにかに縄状のもので足を引っ張られた。

グイ!

「ぐわっ!」

木に引っかけられた縄で足を縛られ、体が宙に浮く。
ゆっくりと目を開けると、目の前にいた思いもしない人物の姿に思わず声を荒げる。

「ちゃおっス!」
「リボーン!なんでお前こんなとこに!」
「ツナがマフィアのボスらしくしてるか見張ってたんだ」
「はぁ?!」
「めんどくせーけど、も譲らねーからな。気にする事ないぞ。お前たちの関係性も分かったしな」
「え?」

なんでそこで、の名前が出てくるんだよ?

「それに、俺とツナの仲だからな」
「何が仲だよ調子のいい!どーせ俺はダメな奴さ!ほっといてくれよ!」
「勘違いすんな。女の期待に応えないなんて、男じゃねーぞ。それに…」
「ちょっ!」

リボーンは、また俺に向かって拳銃を突きつけてきた。

「俺とお前の仲ってのは…殺し屋と標的の仲ってことだぞ」

「!!」

「死ね」

プシュ!



「か、勝つのは、ツナです!」
「お、俺だ!」

永遠に終わりの見えない言い争いに、互いに息が切れ始めた。

「ツナは絶対に来るし、あんたに勝つんだからー!」

私は、腹の底から声がかれそうになるくらいそう叫んだ。
その時だった。

「うおおおっ!」
「ん?」

外からすさまじい音が道場に響き渡る。

「いざ!勝負!」
「ツナ!」

ダン!という扉が開いた音と共に入ってきたのは、額に炎を揺らす死ぬ気モードのツナだった。

「なっ!」

初めこそ驚いた持田先輩だったが、ツナのパンツ姿に笑い声をあげながらツナに竹刀を突き付ける。
しかしツナは持田先輩が馬鹿にしながら攻撃してくる事になどまったく目もくれず、竹刀が折れるほどの力強い頭突きを交わして見せた。
思いもしない光景に、周りは、静まりかえっていた。

「100本!!とったー!!」
「か、髪の毛?」

持田先輩の頭から髪を抜きとって審判にみせるも、審判はあまりの凄まじいツナの勢いに押されて体が硬直していた。

「くっそー!」

その後も、ツナは審判の旗が上がるまで持田先輩の髪を何本も抜きとった。
周りからは歓声が上がる。

「そっか!だれも竹刀で一本とは言ってないもんな!」
「沢田の奴考えたな!」

歓声が上がる中、私も思わず笑顔になる。

「ツナ、かっこいい!」

それに持田先輩も怪我してないよ。
私は、ツナの周りに人が集まってきた後、京子ちゃんと話しているツナの姿をみた直後に私は道場から出た。
今すぐにツナに抱きつきたいけど我慢我慢。今日だけだからね。と言い聞かせながら私はツナの方を振りかえらずに、足を進めた。

「うん。私も頑張ろう!」

絶対、いつかツナの傍に入れる女性になるって、決めてるんだから。

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